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●SNF日誌とは

 たしかに、ウンザリさせられることの多い毎日で、新聞、テレビなどのマスコミも、まるでこれしか話題がないかのように、残忍な事件や、経済の停滞、政治批判を並べ立てています。ていねいに見たり読んだりしていると、生きているのが無駄であるかのような気さえしてきます。
 しかし、人間社会には、もっと心豊かになる話題もたくさんあります。素晴らしい技術の研究や開発に寝食を忘れている人もたくさんいます。本欄では、そんな“ちょっといい話”をたくさん集めて、人間として生まれてきてよかったという気持ちを多くの人々と共有したいと思っています。同時に、その“いい話”を引き立てるために、“イヤな話”も時々交えることもありますが……。

大前研一さんの財政再建策を読む

●続・カラスは何を考える

 7月23日にとりあげたばかりなのに、またカラスか、とお叱りを受けそうですが、私はしつこい性質(たち)でして、どうしてもカラスの表情を掲載したいのです。今朝はいつもより早く4時15分に朝歩きにスタートしました。やはり早起きは三文の徳ですね、今朝はかろうじて表情らしきものを撮ることが出来ました。
 よく見ると、カラスはじつに可愛らしい顔をしています。2羽ともまだ若い感じですが、クチバシはもう立派なものです。仙川の川面をじっと見つめています。狙われたほうは災難ですが、カラスも生きていかなくてはなりません。しかし、この界隈のカラスはとても紳士的(?)で、人や猫を襲ったという話は聞いたことがありません。いちばんの被害者は産まれて間もないカモの雛ですが、私はその惨劇の現場を見たことはありません。単なる噂ではないか、なんて思っています。でも、見ればみるほどカワイイですね。

●大前研一さんの分析は正しいか?
 
 大前研一さんは、ウィキペディアによると、世界的な経営コンサルタントとして知られ、アメリカ合衆国マサチューセッツ工科大学大学院の原子力工学科博士課程修了され、学位は工学博士(マサチューセッツ工科大学)だそうです。そして、カリフォルニア大学ロサンゼルス校教授、株式会社大前・アンド・アソシエーツ代表取締役、株式会社ビジネス・ブレークスルー代表取締役、ビジネス・ブレークスルー大学院大学学長という凄まじいばかりの要職にあります。都知事選で青島幸男さんに負けたのは1995年でしたね。
 私は、わが先輩、西部邁さんと同意見で(注)、経済学をあまり信用していませんし、経営コンサルタントという人種も好きではありません。しかし、そういう信用ならぬ人たちのなかで、大前さんには少しだけ期待していた時期もありました。
 今日は何で大前さんかというと、「日本は国債暴落を防ぐための最後の修羅場へ」という日経BPネットの時評コラムが配信され、これを話題にしたかったのです。それにしてもこの大前さんのコラムのタイトルは、<大前研一の「産業突然死」時代の人生論>というのですが、編集者がつけたのか、ご本人の案なのか…怖いですね。
 少しわかりにくい話ですので、要点を抜書きして紹介します。大前さんはこういいます。

― 国債の大量発行と財政悪化の問題については、いろいろなところで繰り返し発言してきた。民主党のバラマキ政策によって財政の悪化に拍車がかかり、このまま突き進めば財政破綻したギリシャ以上に立ち行かなくなる可能性があるのだ、と。 ―

 しかし、日本のメディアは政府が「財政再建」と言えば「景気に悪影響を及ぼす」と声高に叫び、「景気回復のための財政出動」というと「バラマキだ」と批判する。本質的な議論はなく、単に政府を批判しているだけではないか、といいます。これは私もまったく同感です。続いて、「日経ビジネス」誌7月12日号の特集「日本倒産 あなたは消費税30%に耐えられますか」を引きながら、「次はどこか?」という連想ゲームのように忍び寄る危機を指摘されます。

― 現在世界がもっとも懸念しているのはギリシャ危機だが、「ギリシャの次はどこか」と類推が始まると、危機は別の国に飛び火する。つまり、ドバイショックのソブリンリスク(政府債務の信認危機)はギリシャからスペインに飛び火し、各国を巻き込みつつ、やがて日本を襲うというわけである。1990年代後半にタイから始まった通貨危機がインドネシアやマレーシアに飛び火し、やがて韓国に波及してアジア危機になったように、だ。―

 ここまで読んで、何か変だな、と私は感じます。確かに、経済の専門家がいう経済危機というものがあり、それがあちこちに飛び火しているようです。しかし私は、これは半分は作られた危機なのではないかと疑っているのですが。
 まあ、それはそれとして、この部分で大前さんがいわれている1990年代後半にタイの通貨危機から始まったアジア危機ですが、それはどう広がり、どういう破滅的状態に各国が陥り、それらの危機に見舞われた国々は今はどうなっているのでしょうか?
 確か、今は経済界の方々はみな、これからはアジアに進出しなくてはいけないといって、中国を含むアジア各国が日本の生命線のようにいっています。新聞雑誌の経済欄を見れば、大学の教授から、アナリスト、コンサルタントなど、みんな声をそろえて「アジア、アジア」と叫んでいるのではありませんか。
 かつてのアジア危機がどういうもので、それをどう克服し、なぜ今の日本経済はアジア各国に進出しなければならないのか、そのあたりの事情が私にはよく理解できません。

― 今の国債バブルが永遠に続くわけではない。いつかはそのバブルが弾ける。日本の国債がいまだに弾けないのは、基本的に日本国内で消化しているからだ。しかし、現状でも40兆~50兆円の日本国債を外国人が買っている。その分を空売りされたら国債バブルは弾け、大変なことになる。―

 そのように国債を空売りされて、経済が破綻し、そのために滅んだ国がどこかにあるのでしょうか? 経済、経営関係の専門家の説を拝聴していると、アジア危機でアジアのいくつかの国が滅んだり、アイスランドがもうどこかの国に吸収されてしまったのか、と思ってしまいます。もっと以前にはイタリアやブラジルの経済危機がありましたね。あの時もそれらの国が滅んでしまうかのような言い方をする専門家が多かったのです。

― 私もいろいろなところで発表しているが景気回復については税金を使わない方法がまだまだたくさんある。だから最終的には福祉を後回しにしても財政規律という選択になる。財政に関しては前回も触れたようにまず20兆円くらいの予算を削り、その上で消費税に手をつける、という順序であろう。―

 こういうことを平気でいう人が、私は信用できません。説明はもう面倒なので、最近の新聞から例を引くと、アイルランドが大変な財政赤字に陥り、緊縮財政という道を選択しました。これが一時は「財政再建の優等生」と賞賛されたのですが、2年たっても財政赤字は減らないのですね。そこで6月の世論調査はどう出たかというと、この緊縮財政に反対の野党、労働党が支持率で首位になったというのです。方針転換があるかもしれません。
 オスカー・ワイルドや、ジェイムズ・ジョイスの読者として、私はアイルランドの動向に無関心ではいられませんが、それはさておき、アメリカもまた財政赤字に苦しんでいます。連邦準備制度理事会(FRB)のバーナンキ議長は21日、アメリカ議会でアメリカ経済の見通しを「異例に不透明」と強い懸念を示し、追加緩和策にも言及したそうです。
 要するに大前さんはまるで脅迫するかのように、ご自分の説である財政再建策を政府がとらなければ、日本の国債は暴落し、とんでもないことになるといっておられますが、これが正しいかどうかは、神のみぞ知る、としかいいようがないのです。

(注)西部 邁『焚書坑儒のすすめ エコノミストの恣意を思惟して』(2009年11月、ミネルヴァ書房刊)
 帯にこう書かれています:エコノミストの無思想と無責任を問い、「自由・平等・博愛・合理」の市場論から「活力・公正・節度・良識」の枠組みへと導く。成熟した国民の経済活動とは。危機を迎える近代と国家のあるべき姿とは。

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