●アンテナの向きは、問題ないのか?
アナログ方式で電波を送っているテレビ放送が、2011年7月24日に終了することは、あちらこちらで大宣伝されていますから、知らない方はもうほとんどいないといっていいでしょう。ご丁寧に現在アナログでテレビを見ていると、この放送は来年には見られなくなりますと画面にクレジットされますし、総務省ホームページの「地上デジタル放送のご案内」開いてみましたら、こんな文字が飛び出してきました。
― 2011年7月24日のアナログ放送終了まであと369日(カウントダウン日数が表示されています)。地デジの準備、お早めにお願いします! みなさんの地デジの準備、デジサポがお手伝いします。お問い合わせはコチラ:0570-070101 ―
まあ、決まったことですから特に文句をいうことはないのですが、ちょっと気に入らないことが1つあります。アンテナのことです。え~、その前に「地デジ」という言葉ですが、このイヤな響きの言葉は何とかならないものでしょうか。地上デジタルを短縮したいのは理解できますが、それにしても、言葉には“響き”というものがあり、「地デジ」は何度聞いても、響きが美しくありません。そんなに忙しい人ばかりではないのですから、せめて「地上デジタル」と書いたりいったりすることにしてはどうでしょうか?
さて、アンテナですが、すでにご承知のように、新しいテレビ放送塔の「東京スカイツリー(Tokyo Sky Tree)」が建設中です。この塔はそもそも、地上デジタル放送の電波を発射することを主目的に計画されたものです。この塔から電波が発射されるのは、2012年春からといわれています。
ということは、現在受信している地上デジタル波は、東京タワーから送信されているものです。したがって、アンテナで受信をされている人は、アナログ用のVHFアンテナと同じ方向に向けてUHFのアンテナを立てているはずです。写真をご覧ください。
ところで、Tokyo Sky Treeから送信されるようになると、アンテナの向きを変えなくてはならない地域が出てくると思います。東京タワーとさほど変わらない地域では、問題はないのですが、一定以上の角度で変化する地域は、一度立てたアンテナは向きを新しい塔に向けてあわせる必要が発生するのではないか、という至極単純な疑問を抱くのは私だけなのでしょうか。
アナロ放送終了に向け、地上デジタル放送への対応を迫る報道はテレビ、新聞にあふれかえっていますが、日ごろ何かと一般の人が気づかない細かい問題への注意喚起を怠らないマスコミが、このアンテナの方向については、まったく触れることがありません。ということは、まったく問題のないことと理解しているのでしょうか?
どうしても納得できないので、総務省の窓口に電話をしましたら、新しいタワーからの電波は出力が大きいので、アンテナの方向がずれていても、問題なく受信できます、と美しい声の女性が、ていねいに教えてくださいました。しかし、方向に違いがあれば、当然アンテナの受信利得は減るわけですから、どの程度、つまり何度の角度までの違いなら問題ないのか、と聞きますと、そういうことは分からない、ただ、電波出力が大きいから大丈夫というだけでラチがあきません。
そこで、都内の某家電量販店のテレビ売り場に電話で、同じ質問をしましたら、こういう返事が返ってきました。
― お客さま、ご安心ください。新しいタワーから地上デジタル波が送信される時がきても、しばらくの間は東京タワーからも電波が送信されますので、今、東京タワーに向けてアンテナを立てても、まったく問題はありません。―
これは変な答えですね。せっかく大出力で新しいタワーから電波が送信されるのに、その前に東京タワーに向けて立てた人は、以前の電波でガマンしていなさい、ということになります。後にこれは、あまり信憑性のない説明だとする意見も出てきました。私の友人で放送に詳しい人が、こういうのです。
― 東京タワーから何年間か同じ地上デジタル波を送信するというのは、間違いらしいよ。新タワーからの送信が正式に始まる時点で、きっちり東京タワーからの送信は止める。そうしないと、同じ周波数の電波を2ヵ所から出すことはできないから、周波数を変えなくちゃならないものね。だから、新タワーからの方向が一定以上ずれて、映りが悪い場合は向きを変えなきゃならない。―
おやおや、いろんな説があるものです。
●NHK広報部の考え方
もう少し明確な説明が欲しいので、次に放送事業者の代表としてNHKのお客様相談室に電話をしてみました。変な質問をするものですから、クレーマーと疑われたらしく、広報部に掛けなおすようにいわれ、そちらに電話すると、電子メールで質問書を提出し、先方はその質問に電子メールで回答する、ということになりました。
そして、これは少し前になりますが、4月6日受信のメールで受け取った、NHK広報局広報部の加藤隆さんという方からの回答は以下のものでした。
― 新タワー(Tokyo Sky Tree)からの地上デジタル放送の本放送開始時期は現在検討中ですが、2011年12月に新タワーが竣工後、試験放送によるエリア確認など、一定の準備期間を経て放送を開始する予定です。新タワー移転に際しては、十分に周知・広報を行い、視聴者の皆様にご迷惑がかからないよう進めていきたいと考えています。
受信アンテナの方向については、都心部など送信場所から近い場所では電波の強さが十分であり、また遠方地域ではアンテナ方向に大きな変化がないため、通常の場合、東京タワーの電波を受信して地上デジタル放送を視聴しているご家庭では、新タワーからの放送をそのまま受信することができると考えています。
電波が強い地区にお住まいの世帯では、室内アンテナで地上デジタル放送を受信できる場合があります。新タワーへの移行により電波が強い地区が拡大しますが、室内アンテナを利用できるか否かは、建物の構造やアンテナの設置場所など、各世帯の受信環境により異なると考えています。―
問題のアンテナ方向については、東京タワーに向けたアンテナでも、電波が強いから新タワーに向きを変えなくても受信できると、考えているようです。そこで不思議だなあと思うのは、先日総武線の電車で市川、秋葉原間を往復する機会があったのですが、新タワーと東京タワーに挟まれている地帯がけっこう広くあることに気づきました。この地帯ではアンテナの向きは最大180度まで、相当大きな角度修正をしないと、アンテナは新タワーと正対しません。
電波が強い地帯だから、それでも問題なく受信できるとすれば、これはもう八木式アンテナの考え方を否定することになりそうです。導波素子も必要ないし、向きも関係ないということですね。そういう可能性は十分あるでしょう。そうすると、この地帯では屋根にアンテナを立てなくても、簡単な室内アンテナでよい、ということになります。
このようなことをあれこれ、考えてみると、アナログ放送終了は、新タワーからの送信が始まる時期でいいのではないか、と思うのです。もちろん、視聴者は好きな時期に地上デジタル放送対応にしてもかまわないのですが、その場合、新タワー完成後は、ひょっとしたらアンテナ方向を変える必要があるかもしれない、ということを知る必要はあるでしょう。
先週、原口総務大臣は、地上デジタル放送への移行時期は、2011年7月24日を延期することはまったく考えていない、といわれましたが、むしろ延長したほうがトラブルも少ないのではないでしょうか。未対応世帯に対する対策もいろいろと考える余裕ができます。もう2年ほどあれば、高性能小型アンテナ、室内アンテナなどもできる可能性があります。エコポイントなどの優遇策を延長すれば、家電業界も歓迎ではないかと思うのです。
アンテナの向きは関係ない、というのは推量に過ぎません。またその問題をまったく考えようともしないマスコミには、大いに疑問を感じます。


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