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●SNF日誌とは

 たしかに、ウンザリさせられることの多い毎日で、新聞、テレビなどのマスコミも、まるでこれしか話題がないかのように、残忍な事件や、経済の停滞、政治批判を並べ立てています。ていねいに見たり読んだりしていると、生きているのが無駄であるかのような気さえしてきます。
 しかし、人間社会には、もっと心豊かになる話題もたくさんあります。素晴らしい技術の研究や開発に寝食を忘れている人もたくさんいます。本欄では、そんな“ちょっといい話”をたくさん集めて、人間として生まれてきてよかったという気持ちを多くの人々と共有したいと思っています。同時に、その“いい話”を引き立てるために、“イヤな話”も時々交えることもありますが……。

菅総理は読売新聞の経済政策を受け入れたのでしょうか

  写真は2010年後半初日7月1日の読売新聞1面と、朝日新聞4面です。私は6月19日掲載の「文弱の徒よ、今こそ発言せよ」の記事で、政治家、学者(政治・経済分野)ではない、その他の人々が大いに発言すべきだと申しました。どうも適切な言葉がないので歯痒いのですが、政治経済学以外の学者、芸術家など、とりあえず現在の社会の運営に直接的責任をもっていない人々で、一定の業績があり、識見をもたれている方々の発言がまったくといっていいほどないのが問題ではないかと思うのです。
 例えば小説家の渡辺淳一さんは、消費税を廃止せよといっても、20%にせよといっても、現実社会に直接的責任はありません。しかし、責任がないからこそ、税金は本来どうあるべきかについて、本質的な考えを述べることができるはずです。画家、音楽家、哲学者、舞踊家…どんな分野の誰それさんが、政治的責任のまったくない立場で自由な発言をすることが、何年か先により良い社会を作る大きな力になると思うのです。
 そうでなければ、今発言しない、ある意味で成功している人は、現実を肯定し、また今の政権がどういう政策をとっても、それを肯定するのだと受け止められてもしかたがないのではないでしょうか。

 そういう立場から今日は発言します。最近の菅総理は、マスコミ報道によれば、あたかも消費税が10%程度上がることを前提に、そうした場合の低所得者の負担増解消対策について言及し始めているようです。読売新聞の見出しは、

― 消費税上げ 首相「年収により税還付 200~400万円以下検討 ―

 と、あります。これが事実なら、菅さんは血迷っているとしか思えません。なぜなら6月22日の9党首討論会でも、消費税を上げるとは決めていない、参院選後に超党派で検討しよう、上げる場合は国民に信を問う、といったではありませんか。
 参院選の選挙運動でいうべきは、消費税の税率引き上げをタブーとして避けることなく、今後検討して行きたい、というレベルに留めるべきでなのです。しかし、菅総理が誤解されかねない発言を繰り返しているのは、現実社会の一部に、消費税引き上げはもう避けられない具体的な方向として考えている層が根強くあるからです。
 それは、経済産業省をはじめとする諸官庁であり、財界であり、一部の政治経済分野の学者たちです。これを強力にサポートしているのが、読売新聞です。株式会社読売新聞グループの代表取締役会長にして主筆である渡辺恒雄氏の個性が大きく働いているのでしょうが、読売新聞はちょっと信じがたいような報道姿勢を見せています。
 最近では今年5月7日に「経済再生へ政策転換を」という読売新聞社緊急提言なるものを発表しました。バカバカしいので、詳細は引用しませんが、読売新聞を購読されていない方は http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/special/keizaiteigen/kt100507.htm にアクセスしてください。
 この提言の中に<成長重視の政策に直ちに転換し、政策ミスで景気に水を差す「マニフェスト不況」を断ち切らなければならない>とあります。
 そして、「法人実効税率20%台に」引き下げよともあり、さらに、

―「選挙に不利」との思惑から、消費税率引き上げ論議は封印したままである。安心社会の実現には、消費税を目的税化して税率を引き上げ、社会保障の充実に充てるべきだ。―

 とも書かれています。最近の菅総理の発言と趣旨がほぼ同じであることはお分かりですね。逆にいえば、読売は自社の提言に合致する部分を強調して報道しているとも考えられます。それに対して、同じ7月1日の朝日新聞は、1面で菅発言の消費税を引き上げた場合の低所得者への消費税分還元の年収基準を報道していますが、同時に4面に大きなスペースをとり、

― 消費増税 深まる溝 強気の首相、軽減策言及/小沢氏反発「約束は実行」―

 という見出しで、民主党内が決して総理の方針と完全一致していないことを報じています。そして、読売新聞はあれだけ問題となった、沖縄普天間飛行場移設問題については、限りなく2006年の日米政府合意に戻ったことを歓迎して、それ以上深入りしてはいません。しかし、普天間問題は何も解決していないと同じで、今回の選挙でも、もっと大きな論点としてとりあげるべきなのです。この点でも朝日新聞のほうが少しはマシな報道ぶりを見せています。

 大新聞、テレビの報道を鵜呑みにしてはいけません。消費税率も法人所得税率も検討する必要はありますが、新聞がいうのはいつも諸外国との数値比較です。しかし税率は、その国の内情(社会資本の蓄積、人口数や人口構造、資源の多寡、財政規模など)が異なりますから、一律に数字だけで比較することはできません。
 あわてることはありません、じっくりと超党派で検討をしていけばいいのです。税率を引き上げる前に、議員をはじめとする公務員の削減、税金無駄使いの洗い出し、富裕層への特別課税を含む不公平税制の解消などなど、検討課題は山ほどあります。不特定多数から一律に税を徴収しようというのは、もっとも安易な方法で、利口な政策とはいえません。
 
 そして、つくづく不思議でどう考えても分からないのは、中国など一部の国を除いて、なぜ先進諸国の大半が財政危機に陥ってしまったのでしょう。それを明確に説明できる経済学はなく経済学者もいないはずです。経済学者と官僚は、自分たちが納得できる理論を構築することが職務であり、人間社会を本質的に健全にする方法など考えていないのです。世の中の学問で経済学ほど無力な学問はない、と私は思います。

 こんな具合に、無責任な立場だからこそ言える発言を私たちはしていかなければならないと思うのです。

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