・プロローグ:強い意志をもって歩くこと
私は健康法とは無縁の生活を長年してきました。むしろ体に悪いことばかりしてきたといってもいいほどです。さすがに、何日も寝込むほどではありませんが、体調を崩すことが多くなり、これではまずいかなと気づきました。そんなときに、だらしのないあなたにも出来るからと、ツレアイに強く勧められたのが朝歩きでした。15年ほど前から始めたのですが、なかなか長続きしません。
しかし、とあることから一念発起、昨年からは雨が降ろうが風が吹こうが、1日も休まず毎朝1時間歩くことを決意し、実行してきました。この体験でじつにいろいろなことを知りました。もちろん、万人に適応する健康法などありません。私がこの日誌の新しいカテゴリーとして連載する「健康法」はあくまでも、私の体験に、これまでに知り合った多くの人の体験を加え、さらに付き合ってきた医師や医学関係者の意見も重ね合わせて、こうではないかと考えたことをお話するものです。医療と健康法に関する気軽な読み物としてご愛読ください。
まず、写真をご覧いただきましょう。まだ寒い3月ごろの写真ですが、この男性は私の歩き仲間の1人で、元・中華料理店店主の金本さんです。かなり以前から歩いている姿は拝見していたのですが、正式にご挨拶をし、お話をするようになったのは昨年夏ごろからです。
何しろ右手に杖をもち、左半身がかなり不自由な感じですので、なかなか挨拶以外の言葉は掛けにくかったのです。記録帳には“cane(杖)”のCをとって、Mr.Cと書いていました。「いつもの時間にMr.Cと出会う。お元気そうだ。毎日歩くのはさぞ大変だろう」という具合です。
そのMr.Cと名乗りあうことになったのは、猫のお陰です。Cさんが勝淵神社のすぐ裏手で、ノラ猫に話しかけエサを与えている姿を何度か見かけて、私も猫が大好きなので、猫を話題にすればスムーズに会話が出来るかもしれないと思ったのです。
今から思えば別に猫を話題にしなくてもよかったのです。Mr.C、金本さんはとても率直な方で、名乗りあってすぐにいろいろなお話を聞くことができました。そして、ご自分の体のことも自ら話されたのです。
金本さんは、10年ほど前に脳梗塞で倒れられました。手術はできず、入院後3年近くは寝たきりで、医師からは「たとえ命があっても、これから残りの一生は車椅子を覚悟するように」といわれたそうです。しかし、リハビリ専門の病院に移されてから、金本さんは人の何倍もリハビリに励みました。
「車椅子生活なんて、とんでもない。絶対歩けるようになってみせる」という強い決意で、医師が驚くほどの回復をみせ、退院することができました。
退院後はまだ歩行はスムーズではなかったのですが、医師の無理をするなという忠告を無視し、ご自宅から仙川河畔を歩く4キロほどのコースを毎日歩き始めたのだそうです。自力で歩けなくては生きている甲斐がないと思われたのですね。
最初のうちは、よく転ばれたそうです。この転倒が危険で、片側の手足が不自由ですからバランスがとれず、どうしてもバタンと板を倒すように倒れてしまうのです。歩き始めて7年ほどの間に、数回骨折したそうです。しかし、金本さんは骨折にめげることなく、今でも毎日歩き続けています。
1年に何回か検査を受けますが、担当の医師は「そうやって無理をして歩いていると、だんだん関節が傷んで今度は歩けなくなるぞ、無理するな」というのですが、金本さんは聞く耳をもたず歩き続けています。昨年の検査では、関節はどこも正常だったそうです。
「ついに医者はいったよ、お前はバケモノだって、ハハハ」
こうして文字にすると簡単なことのようですが、毎朝歩き続けることは、正常人でも難しいのです。金本さんの精神力には心底脱帽します。そして、毎日歩くことが、他の臓器にもいい影響を与えるのでしょう、金本さんは血色もよく、健康そのものに見えます。
冬でも夏でも、午前4時26分に家を出るそうです。このスタート時刻には特に意味がないのだそうですが、一度決めたことは必ず守る、これが継続には大事なんですね。私は冬の間は30分~1時間遅く出ます。それでも暗いし寒いし、何度も止めようかと思うのですが、金本さんの意思の強さは、まさに超人的です。
私の医と健康の連載には、金本さんはこれからもしばしばご登場願うことになります。そうそう、ご本名や写真を掲載することは喜んでご承知いただきました。


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